2018.1.28
Cassina Japan の入社試験のカタログ ー No.474前回から続きです。Cassina Japan というインテリアの会社に1987年秋に転職しました。当時は日本にもインテリアコーディネーターという職業が出来た頃。不動産会社が不動産の付加価値を仕掛けた一つだったかと思いますが、衣食より遅れていた住空間、インテリアというものに、きらきらと大きな夢を感じていました。同時に、2,3年くらい美しいものに触れてみて辞めようと、気楽に考えていました。特に、イタリアモダンは日本ではよく知られていなかった時代、初めて見る家具やプロダクトのその美しさに魅了されました。Cassina入社試験は、筆記の他に、インテリアコーディネート力を試されるもので写真のカタログが配布され、大きなリビングダイニングルームの平面図に、300万予算で、家具を選びレイアウト図を描き、見積書を作成し、それらを持って、経営陣にプレゼンテーションする面接でした。私だけ何の予習もしていなかったので、その場の勘、インテリアスクールで学んだわずかなすべてに頼るのみ、でも、トップで受かりました。たまたま図面も見積もりもうまくいったのです。縁だったのだと思いますが、その時の自信はないのに受かる確信のような強く不思議な気持ちだったことをよく覚えています。Cassina Japanでの、ショールームの物販と、レイアウトからイベントや営業物件のあらゆるコーディネートのVMD仕事、そして、MDの仕事も兼務になりました。そして、そこから、入社して研修中の3日目から、ヴィコマジストレッティが日本で設計した唯一の住宅、谷本邸の物件、最初のイベント、シャルリット・ペリアン来日、続くフランク・ロイド・ライトの復刻新作発表のイベントなどの、会場作りやVMDの仕事などにつながっていきます。何もなかった私に、突然大きな仕事がいくつも入ってきた、天国のような地獄のような日がその後何十年も続きます。小さな世界での、大きな、たくさんの美しいもの、人との出会い。
2018.1.16
Cassina カッシーナとの出会い ー No.473もう30年も前のことになります。80年代後半好景気の頂点の時代わたしは大手不動産会社から小さな家具インテリアの会社に転職しました。イタリアの「Cassinaカッシーナ」の日本法人、まだイタリア本国と合弁会社でした。不思議な出会いでした。わたしは別の会社に入りたくて選んでおり、たまたまインテリア学校の先輩から、'その隣にCassinaというオフィスがあるよ'と言われので、ついでに受けただけでした。軽い気持ちで何となく受けて決まったそこでの多くが小さな私の人生の大きな転機となりその後場所や人多くの縁に繋がっていきます。そしてわたしは売ることだけでなく、営業企画としてのMD商品開発や選定やVMDレイアウトや、アートやイベントなど時代の変化の過渡期に、また会社の成長の過程に、実に多くの様々な経験を新規部門やプロジェクトの立ち上げなどもしました。後半は上場の準備から経営に関わりました。その頃は、仕事の9割は人事というくらい、取引先やお客様だけでなく内部の人まで「人間」の管理は、苦労しました。日本ではまだ新しい「インテリア」という仕事に於いて、天国と地獄のような経験の後に残ったものは、得た多くの喜びと、よい人たちとの出会い。80年代後半はまだ海外のモダンなインテリアは日本に少なく、Cassinaは見たことないものばかり、強烈にかっこよかった。コルビジェすら一般には知られておらず、Cassinaは'変わってる家具が置いてある変なところ'と言われた時代。だからこそ、そこに集まってくる人も魅力的でした。夢や可能性があり、商品は商材ではなく魂があり、ビジネスもまだ誠実で情熱があった時代でした。続けて、少しずつ、インテリア業界での経験の一部を書いていきます。
2018.1.14
2018年 ー No.472
昨年は新たな出会いが多い1年、不思議なうれしい年でした。とくにインテリアのこと
好きな方々と色々な思いを共有させていただき感謝しています。
ありがとうございます。
ただ、2011年からまたその後の時代の変化により、昔のようにインテリアというものを心から楽しむことができなくなりました。多くの人が同じ気持ちと思います。暮らしのあり方とか豊かさとか、大きく考えが動き続けています。今年は少しずつ新たなことを始める予定です。こちらのページでは、昔話が多くなりますが、日記のようにインテリアのこともたくさん書いていきたい、もういなくなってしまった多くの人も含めて、今まで出会ったすべての誠実ないい人たちに少しでも恩返ししたいと思っています。よろしくお願いいたします。
2017.12.31
Innocent When You Dream ー No.471Tom Waits トム・ウェイツの 「Innocent When You Dream」少し戻ります。クリスマスの夜中 年1回のラジオ番組『沢木耕太郎のMIdnight Express 天涯へ』で今年最後にかかった曲です長くこの番組をベッドの中で聴いています。沢木さんの音葉、特に最後の言葉と曲が、1年の締めくくりになっています。ゆっくり歩いていこうとわたしも思います。
2017.12.27
カズオイシグロ「日の名残り」 ー No.470
ノーベル文学賞を受賞されたカズオイシグロを知ったのは80年代終わりの「日の名残り」。
若い頃に南アフリカで新聞記者を後にNY本拠アジアのマーケットのコンサルティング会社の経営者という優秀なイギリス人の友人から、
日本人がなぜこんなにイギリス社会のことを理解できるのだろう、すばらしい小説だ、と教えてもらった。
私は最初に映画で観た。
知らないイギリス独特の社会の内側や、成就しない恋愛の細やかな心の機微、物語から受けるイギリスらしい静かで暗く美しい心象を受け取る、ごく自然なゆったりした流れの中で。
とにかく全てが新鮮だった。
それから、カズオイシグロが大好きになった。冷たい空気を含んだような物語と浮かぶ映像は一見孤独。
でも、そこに寄りそう愛を感じ不思議な余韻がずっと残る。人や命を考える。
良質な映画(または小説)からは、その時代やその環境での「生活や暮らしやインテリア」も観ることができるので、それもまた楽しい。よく聞くカズオイシグロさんの作品にある、'メタファー'は、生きていくこと人間にとって多くの大切なことを教えてくれる。